院長の独り言

・歯や歯槽骨を再生する再生歯科医療の現状

    21世紀は再生医学の世紀と言われています。そんな中,2001年7月3日
   の東京読売夕刊によれば名古屋大学の上田教授は,患者自身の細胞と粉末セラミ
   ックを歯肉に注射する事により,1度失った歯槽骨(歯を支えている骨)を再生す
   る治療法の開発に成功したそうです。
    何年か前,豚の骨誘導蛋白を精製して,人間の歯槽骨を再生する治療法が紹介
   された事がありましたが,種が違う動物の蛋白を使うと言う事で,私は疑問を感
   じています。現在熱処理をする事により安全であると言う事で,厚生労働省は認
   可しています。今回の方法は,自己の細胞を使うので,自己免疫反応の面でも,
   有利な方法と思いました。
    また,歯槽骨だけでなく歯そのものを遺伝子工学で再生する研究も発表されて
   います。
    早く一般の開業歯科医院でも両方の再生法が利用出来る様になって欲しいと思
   います。と,思っていましたら2002年6月4日に上記の上田先生と日立メデ
   ィコは,歯の再生技術で共同研究をして、今後5年間かけて乳歯、永久歯に次ぐ
   三番目の「再生された歯」をヒトの細胞から作り、量産化を目指すと発表しまし
   た。同社の見込みによると、10年後には年間100億円の売り上げを見込んで
   いるそうです。(日立メディコニュース)これが実用化され,自分の体細胞由来
   の人工歯を植える事が出来れば,現在の金属による人工歯根(インプラント)に取
   って代わり,神様からもらった自然の歯が無くなっても安心な日があと少しで来
   ます。すると今までの取り外しの義歯(入れ歯)は無くなる運命でしょう。但し歯
   をバイオ技術を使って再生して顎に埋めるという事は,埋めた再生された歯も虫
   歯になる事になりますねぇ。やはり歯科医師は不滅ですね。
   詳しくは幹細胞組織医工学(歯胚再生学研究部門)のHP
    2003年4月22日に「抜けた乳歯から幹細胞 」のニュースが届きました。
   研究としては意義のあるものだと思いますが,実際の問題としては,乳歯が抜け
   る頃の歳だと歯はまだ沢山あるはずですから,利用する歳まで何十年も保存して
   おくのでしょうか?
    2007年2月に東京理科大学と大阪大学との共同研究グループが,マウスの
   胎児から取り出した歯の基の臓器を一端細胞にまでバラバラにして,再度組み上
   げる事に成功したと発表しました。詳しくはここをクリックして下さい。
    2002年当時の話では,5年後の2007年つまり今年に実用化のはずだっ
   たのですが,ここの最後の部分を見ると「文部科学省科学技術政策研究所の未来
   技術予測は、2019年には患者の細胞から作製した臓器を移植できるようにな
   るとみている。」とあり,12年伸びてしまいました。残念!



・何故,月は秋の季語なのか?

    俳句の世界では,月は秋の季語と言う事になっています。無論,夏の月とか冬の
   月と書けば変わりますが,ただ,月というと秋の事です。一年中見える月が何で秋
   のものなのか疑問でした。歳時記には「月には四季それぞれの趣があるが,秋は大
   気が澄み,いちだんと清らかさが増し,その美しさもここに極まるからである。」
   (新日本大歳時記:講談社)とあり,単に大気の問題だけと思っていました。しかし
   ちゃんと天文学的理由もあったのです。太陽の高さは夏高く冬は低いのですが,月
   は太陽と反対の夜見えるものなので(特に満月は),夏低く,冬は高い訳です。地平
   線から高ければ高い程,月の光は地球の大気の吸収による減光を受けにくく,光り
   輝くと言う寸法です。この伝で行くと,冬至の時の方が月が高く,秋よりも光り輝
   く訳ですが,今度は気温が低くなり過ぎて,月を鑑賞する余裕が無くなってきます。
   そこで,日本人には月の旬は秋と言う事になった訳です。太陽の高さは季節と連動
   していますし,窓に差し込む日の光の位置が変わったりしますので意識しますが,
   月の高さは意識しませんでした。毎日毎日月は出ているにもかかわらず,自然とは
   大分距離があったようで反省の日々です。もっよく観察しなければいけませんね。


・ブック スタート

    赤ん坊は生まれたての時の,オギャーという泣き声は,全世界共通だが,半年間
   経つと,少しずつ泣き方が変わる,と言う研究があります。つまり,お母さんや家
   族の声を聞きながら,赤ん坊なりに真似ようとして,母国語のリズムや抑揚にだん
   だん似てくるそうです。と言う事は,たとえ分りっこないなと思っても,赤ん坊に
   語りかける事は大事な事だと言う事です。これを絵本などの本を読んで「読み聞か
   せ」る事によって積極的に進める運動が,「ブックスタート」と言う運動です。イ
   ギリスの読書推進活動の一環で,赤ん坊に絵本や「読み聞かせ」のハンドブック等
   をセットにして配ったのが始まりだそうです。日本の子供たちの本離れも,これで
   防止出来るのではないかと,本好きな私は密かに期待しています。


・電動歯ブラシと性格

   過日の「健康フェア」での事ですが,電動歯ブラシの事を尋ねられました。
  その方が,見るからにまじめできちっとした性格の様に思いました。そこで,
  「電動歯ブラシというのは,歯ブラシの毛先を歯に当てたら,持つ柄は動かさ
  ない事が大事です。毛先が自動的に動くのに,その上に柄を動かしたら,歯肉
  を傷つけたり,歯の面を削ってしまうこともあります。」とご説明をしたら,
  案の定,「わたし,していました。」と。そこで「何事も,一所懸命にやる事
  は,良い事なのですが,毛先が動く電動歯ブラシを普通の歯ブラシの様に,動
  かしながら使うのは,やりすぎです。電動歯ブラシを使う時は,よく説明書を
  読んで,出来たらかかりつけの歯医者さんに持っていって,電動歯ブラシの歯
  磨き指導を受けて下さい。」とお話ししました。やはり,いーかげんな性格で
  は困りますが,きっちりし過ぎるよりは,いい加減の性格の方が歯は長持ちす
  るかもしれません。